富山県で長年親しまれてきた給食・弁当製造業者が、物価高や食中毒問題を乗り越えられず、自己破産の道を選んだ

2025年10月10日

先日、富山県で長年親しまれてきた給食・弁当製造業者が、物価高や食中毒問題を乗り越えられず、自己破産の道を選んだというニュースが報じられました。地域住民からは「安くておいしかったのに…」と、その突然の別れを惜しむ声が上がっている。


食中毒発生や物価高が追い打ちとなり、給食弁当を製造販売していた「高岡総合給食センター」が7日付で事業を停止し、富山地裁高岡支部に破産を申請しました。負債総額は約1億6000万円に上ります。

給食業界を襲う、静かなる危機

この一件は、単なる一企業の経営破綻ではありません。日本の「食のインフラ」が静かに、しかし確実に蝕まれている現実を浮き彫りにした、社会全体で向き合うべき問題の氷山の一角なのです。
なぜ、このような事態が起きてしまうのでしょうか。背景には、給食業界が長年抱える構造的な問題が存在します。

終わりの見えない「物価高騰」

近年、ご家庭の食卓同様、あるいはそれ以上に、給食の現場は深刻な物価高騰に苦しんでいます。食材費はもちろん、光熱費、そして働く人々の生活を守るための人件費も上昇の一途をたどっています。帝国データバンクの調査によれば、2023年の給食事業者の倒産件数は過去5年で最多ペースとなり、実に6割以上の事業者が赤字や減益に陥っているという厳しい現実があります。

項目状況
倒産件数2年連続で増加し、過去5年で最多ペース(2023年)
収益状況6割超の事業者が赤字または減益(2022年度)
価格転嫁コスト上昇分を「全く価格転嫁できていない」事業者が15%
参考文献

[1] FNNプライムオンライン「『高岡総合給食センター』が破産申請、物価高に食中毒発生も追い打ち」Yahoo!ニュース, 2025年10月8日. https://news.yahoo.co.jp/articles/1a3f35a12765083d93d26da4e8932e627587e5a4

[2] 帝国データバンク「『安い給食』物価高で限界。給食企業の倒産、2年連続増加」TDB REPORT ONLINE, 2023年11月9日. https://www.tdb-publish.com/2023/11/76b90ce56ce5a3f60306764ae0b21d87a2ae62f0.php

[3] 食品産業新聞社「物価高騰で倒産増の給食業界、給食事業経営者3名が語る課題と未来への意思」食品産業新聞社ニュースWEB, 2024年3月7日. https://www.ssnp.co.jp/feeding/540439/

投稿者:米須靖朗