要点サマリー

第1位:物価高騰による給食費危機と基準費用額の引き上げ
全国老人福祉施設協議会の調査によると、介護施設の給食において実際にかかる1日の食費は1,788円(うち人件費815円)に達しているのに対し、介護保険の基準費用額は1,445円に据え置かれており、343円もの差額が発生している。
これを受け、政府は2026年8月から基準費用額を1日100円引き上げる方針を決定した。しかし、定員80人規模の特養では年間約1,000万円の赤字が発生しており、100円の引き上げでは根本解決には至らない。給食委託業者からの撤退通知や値上げ要求が相次ぎ、「給食難民」の懸念も現実化している。
第2位:ニュークックチルシステムの本格導入拡大
人手不足と働き方改革への対応として、ニュークックチル方式の導入が病院・介護施設で急速に拡大している。この調理システムにより、早朝・夜間勤務をなくし、最小人員での安定運営が可能になっている。
2025年9月には、ホシザキがニュークックチル対応の再加熱カート「エルゴサーブ」「エルゴサート」をリニューアル。操作性と安全性を強化し、現場での実用性が大幅に向上した。調理後90分以内に3℃まで急速冷却し、5日間保存可能なこのシステムは、食中毒リスクの低減と業務効率化を両立する革新的ソリューションとして注目されている。
ただし、ニュークックチルシステムには運用上の制約もある。保存期間が5日間と限定的なため、週単位の生産計画に縛られる。また、90分以内の冷却完了と3℃までの厳格な温度管理が必要で、冷却設備の能力や運用スケジュールに依存する。さらに、冷却後の温度管理が不十分だと品質劣化や食中毒リスクが高まる。
こうした課題を踏まえ、より長期保存が可能で運用の柔軟性が高いニュークックフリーズ方式への関心も高まっている。冷凍保存により保存期間を延長でき、生産計画の自由度が向上する。温度管理の幅も広く、品質維持の観点でも優位性があるとされる。
第3位:メディカル給食市場の成長と在宅配食の拡大
ある調査によると、2024年度の国内メディカル給食・在宅配食サービス市場規模は2兆4,096億円(前年度比102.4%)に達した。特に高齢者施設給食の市場規模が病院給食を上回るペースで成長しており、在宅配食サービス市場も2025年には2,160億円に達する見込みである。
この成長を支えているのは、高齢者人口の増加と在宅医療・介護の推進である。栄養ケア配食サービスが地域包括ケアシステムの重要な役割を担い、「食」を通じた健康支援が一層重視されている。
考察
上記3つのニュースは、福祉給食を取り巻く課題と対応策、市場動向を示している。
第1位の給食費危機は、制度設計と実態の乖離が顕在化した事例である。基準費用額の引き上げは前進だが、実費との差は依然として大きい。施設運営の持続可能性と利用者の負担のバランスをどう取るかが課題となっている。
第2位のニュークックチルシステムは、技術による課題解決の一例である。導入には初期投資が必要だが、長期的な人件費削減と業務改善の効果が期待される。一方で、設備投資の負担や運用ノウハウの習得が必要となる。保存期間の制約や温度管理の厳格さといった運用上の課題もあり、施設の規模や運用形態に応じた最適な選択が重要である。
第3位の市場成長は、高齢化と在宅医療の推進を反映している。市場拡大は機会だが、質の担保と持続可能な事業モデルの確立が重要である。
これらは個別の事象ではなく、相互に関連している。給食費の圧迫は設備投資を難しくし、人手不足は効率化技術の導入を促す。市場成長の一方で、持続可能な運営モデルの構築が求められる。
当社は、これらの動向を注視し、クライアントの課題解決に資する情報提供とコンサルティングを継続する。特定の技術や制度を推奨・肯定・否定するものではなく、各施設の状況に応じた最適解の検討を支援する立場である。
投稿者:米須靖朗





